塗装について考える

塗装は模型製作にとって重要な作業です。道具から塗り方まで説明します。

どんな道具をそろえればよいのか?

塗料
模型店には何種類もの塗料が並んでいます。一般にはタミヤのアクリル、エナメル、グンゼの水性ホビーカラー、Mr.カラーの4種類が入手しやすいでしょう。これらにはそれぞれ特徴があり、またビン入りと缶スプレーがありますが、目的にあわせて使用することにより美しい塗装が可能です。それぞれの特徴については後述します。

筆は塗装作業には欠かせない道具です。初めて筆を買うのならば平筆丸筆の2本をそろえれば良いでしょう。筆選びのポイントは穂先が揃っていて毛が抜け落ちないものを選ぶことですが、お店で見てもよく分からないと思います。私も最初はそうでした。タミヤが発売している筆「モデリングブラシ」はその条件を満たしている上に値段も手ごろです。これを買っておけば間違いないでしょう。
作りなれてくると、自分に合った筆が何となくわかってくるものです。買い足すのはその時で構いません。

うすめ液
シンナー、溶剤ともいわれますが塗料を薄めたり筆を洗浄したりするのに使います。塗料の種類にあわせて使い分けてください。

塗料皿
塗料を薄めたり、色をまぜたりするときに重宝します。グンゼから10枚くらいのセットで発売されています。金属製ですので使い終われば溶剤で拭き取って何度でも使用できます。

マスキングテープ
色を塗るときに塗りたくないところを隠すことを「マスキング」といいます。マスキングテープはその作業のための道具で、曲面に馴染む弾力性と塗装面を傷めない程度の糊の強さが必要です。これもタミヤのマスキングテープが文句なしにお勧めです。また、そういう意味でセロテープでの代用は危険ですので止めましょう。

その他
洗濯バサミや目玉クリップがあると塗装が楽になる場合があります。塗料で汚れるので、模型専用に用意しておいた方がよいでしょう。100円ショップなどで買うと安上がりです。


塗料について

目的に合った塗料を使うことで、効率良くそして美しく仕上げることができます。
各塗料の特徴
ラッカー系アクリル系エナメル系
メーカー:商品名グンゼ:Mr.カラー
グンゼ:Mr.スプレー
タミヤ:タミヤカラー(スプレー)
グンゼ:水性ホビーカラー
タミヤ:アクリル
タミヤ:エナメル
タミヤ:ペイントマーカー
長所乾燥が早い
色が豊富
ノビがよい
つや消しの質感がよい
筆が水洗いできる
ノビがよい
金属色が美しい
短所筆ムラになりやすい乾燥がやや遅い乾燥が遅い

上の表は、現在日本の模型店で入手できる一般的な模型用塗料の特徴です。最初は、まずこれらの塗料を使ってみてください。
なお、DIYショップなどに売っている「実車用スプレー」は実車と全く同じ色が塗れるということで一見便利そうですが、プラスチックを塗装するには溶剤が強すぎて不向きです。特に初心者は手を出さないほうがよいでしょう。

どんな時にどの塗料を使うか
ラッカー系塗料は、その性質から筆塗りよりもどちらかというとスプレー塗装で広い面積を塗装するのに適しています。車のボディ塗装などに最適です。

アクリル系塗料は筆塗りには最も適しているでしょう。また筆の洗浄に水を使える、溶剤のシンナー分が少なく危険性が低いなど初心者には安心の塗料です。

エナメル系塗料は乾きが遅いため、大面積よりも小面積向きです。また、他の塗料を冒さないため、スミ入れ、汚しなどの作業に最適です。

それぞれ、塗料を薄めたり、筆を洗浄する時には専用の薄め液(溶剤)を使用してください。(アクリル系塗料の筆の洗浄には水が使えます)

混色について
各塗料ともカラーバリエーションは豊富ですが、どうしても自分で色を混ぜて作りたいという時もあります。その場合は必ず同じ系統の塗料どうしで混色してください。できれば同じアクリルでもグンゼとタミヤの混色は避けた方が無難でしょう。

重ね塗りについて
それぞれの塗料は溶剤の強さなどにより重ね塗りができる場合とそうでない場合があります。下の表を見てください。

下塗りする
塗料
上塗りする塗料

ラッカー系アクリル系エナメル系
ラッカー系 丸 二重丸 二重丸
アクリル系 だめ 丸 二重丸
エナメル系 だめ 丸 丸

丸は気をつければ問題なし、二重丸は全く問題なし だめは重ね塗りは危険を表します。

従って、重ね塗りの理想的な順番を図示すると次のようになります。

重ね塗りの図

ただし、何層も重ね過ぎると表面が塗膜で厚くなるわけですから、模型表面のディテールを潰してしまうことにもなりかねません。気をつけてください。

塗装の手順(筆塗り編)

筆塗りの場合の簡単な手順を説明します。
塗料をよくかき混ぜる
塗料は必ずといっていいほど、ビンの中で顔料が沈澱してしまっています。使用する前には必ずかき混ぜてください。その場合、面倒でも棒状のものでしっかりとかき回すこと。缶スプレーの感覚でビンを数回振っただけでは、塗料が均一に混ざりません。また、筆でかき回すのも止めましょう。筆を傷める原因になります。
いくらかき回しても塗料の色が変わらなくなればO.Kです。

塗料濃度の調整
一般的に、ラッカー系の塗料は、ビンそのままの塗料濃度では濃すぎて使いにくいと思います。そんな時は専用の溶剤で薄めながらちょうどよい濃さにしてください。明確に「塗料何ccに対して溶剤何cc」などという数字はありません。色によっても違いますし、その時の温度や湿度でも全く変わってきます。要は、自分が塗りやすい濃さにするだけです。これは経験を積むしかありません。
濃すぎるとカスれて塗りにくいし、厚塗りの原因ともなります。逆に薄め過ぎると色が充分にのりません。
なお、濃度の調節は塗料ビンに直接溶剤を入れるのではなく、塗料皿などでおこなった方が、失敗しなくてすむと思います。
アクリルやエナメル系の塗料はわりとビンそのままの濃さでも大丈夫のようですが、濃いと思ったら薄めてみてください。
いずれの場合も、調整した塗料はランナーや入らない部品などで試し塗りをしてみてから本番の塗装をした方が無難です。

基本的な筆の使い方
広範囲を均一に塗るには平筆を使用するのがよいでしょう。とにかく「一回で終わらせようと思わない」こと。2回から4回くらいの重ね塗りをした方が確実にきれいに仕上がります。

一回めの塗り 左図のように、塗る方向は必ず一定方向にすること。面倒臭くても反対の方向に塗るいわゆる「筆返し(塗りもどし)」はしないこと。
塗り終わったら充分に乾燥させてください。生乾きのまま2回目以降の塗装をすると塗装面が汚れる原因になります。乾燥時間は塗料の種類によっても異なりますが、安全をみるなら半日から1日乾燥させるのがベストでしょう。ほこりが付かないよう注意して乾燥させてください。


ニ回めの塗り 1回目の塗装が完全に乾いたら、2回目です。2回目の塗りは1回目と垂直方向に塗っていきます。この時ももちろん筆返しはしないように。3回目以降はこの繰り返しです。4回くらい塗り重ねれば、ムラなくきれいに仕上がっているはずです。これ以上塗り重ねると、今度は塗料の厚みで見苦しくなりますので注意してください。

筆の洗浄
筆は一色塗る度に洗浄しましょう。洗浄には塗料に応じた溶剤(アクリルの場合のみ水でも可)を使用します。溶剤は洗浄の他に塗料の薄め液としても使用しますので、洗浄用と薄め用とは最初に容器を分けておいたほうがよいでしょう。使用する容器はスチロール(プラスチック)製ではないものにしてください。フィルムケースやベビーフードの空き瓶などがお勧めです。
溶剤で筆に付いた塗料をしっかり落としたら、ぼろ布(使い古したTシャツなど)で筆をふきとり、保管してください。筆立てやビンなどに立てておく場合は筆先を上にして保管してください。

その他
塗装中は換気と火気に十分注意してください。また、周りを汚さないためにも、作業台、テーブルの上には古新聞などを敷いておくと安心です。

塗装の手順(缶スプレー編)

筆塗りに続いて、缶スプレーの使い方です。
どういう場合に使用するか
缶スプレーは広い面積を均一に美しく塗ることができます。従って、車のボディや飛行機の単色部分(基本塗装)などに向いています。

色を塗る前に
塗装前には缶をよく振って、中の塗料と溶剤をかき混ぜてください。ビン入りの塗料と違って中を見ることができないので不安ですが、私の場合は20回から30回振るようにしています。
次に不要パーツ等に試し吹きをしてください。色がムラになったりする場合はかき混ぜ方が足りませんのでもっとよく振ってください。
また、スプレー塗装の場合は飛沫が広範囲に飛び散りますので汚れ防止の古新聞は広めに、そして体への影響も考えてマスクを着用してください。当然ですが、スプレー塗装の場合は屋内では塗装しないこと。風の少ない屋外で塗装してください。

スプレー塗装
スプレー塗装 スプレーは塗装対象物から約30cm離して吹くのが理想とされています。 近すぎればタレの原因になるし、遠すぎれば塗装面がざらざらになってしまいます。 これもある程度経験が必要ですので、なれるまでは試し吹きで感覚(間隔)をつかんでおいてから塗ってください。
吹き方のコツとしては、モデルに対してまずは様々な方向から軽く吹き、何度か塗り重ねた方が良いでしょう。

実際に作ってみよう
簡単に道具から塗りかたまでは説明してきましたが、文章だけではわかりづらいと思います。「 実際に作ってみよう」では、キットを作りながら説明していきます。

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